忙しい人のための特撮怪獣映画概論その②【誰得】
忙しい人のための特撮怪獣映画概論その②【誰得】
忙しい人のための特撮怪獣映画概論その②【誰得】
続き

7/23 完成。

今回は項目【特撮技術】について

【特撮技術】

空の大怪獣ラドン(1956)
「こちら北原。国籍不明の一機、福岡方面に向かって飛行中。高度2万。進路北北西、超音速!」
「何?音速を超えている!?」

≪基本データ≫
1956(昭和31)年12月26日上映
配給:東宝
製作:田中友幸
音楽:伊福部昭
特技監督:円谷英二
監督:本多猪四郎
原作:黑沼健

≪ストーリー≫
炭鉱技師の河村繁は阿蘇付近の炭鉱に勤務していた。ある日、坑道内で原因不明の出水事故が発生。それに続いて炭鉱夫らが水中に引き込まれ、惨殺死体となって発見される殺人事件が相次ぐ。当初は河村の友人で行方不明の炭鉱夫、五郎が犯人と目されていたが、まるで日本刀で斬られたかのような被害者の傷口に警察も頭を悩ますばかりだった。やがて出現した真犯人は、体長2メートルを超える巨大な古代トンボの幼虫・メガヌロンだった。村に出現したメガヌロンに警官のピストルでは歯が立たず、河村は警察が要請した自衛隊と共にメガヌロンが逃げ込んだ坑道に入る。機関銃によって一旦は怪物を追い詰めるが、発砲の衝撃で落盤が発生、巻き込まれた河村は坑道内に姿を消してしまう。
やがて阿蘇では地震が発生、阿蘇山噴火の前兆かと付近一帯は騒然となる。だが、地震によって出来た陥没口で調査団が発見したものは、落盤事故から奇跡的に生還したものの、記憶喪失となっていた河村であった。時を同じくして、航空自衛隊司令部に国籍不明の超音速飛行物体が報告された。確認に向かった自衛隊の戦闘機を叩き落とした飛行物体は、さらに東アジア各地にも出現、各国の航空業界を混乱に陥れていた。一方、阿蘇高原では家畜の失踪が相次ぎ、散策していたカップルが行方不明になる事件が起きた。若い恋人の心中かと思われていたが、彼らが残したカメラのフィルムには、鳥の翼のような謎の影が映っていた。
入院していた河村の記憶は戻らないままだったが、恋人キヨの飼っていた文鳥の卵の孵化(ふか)を見たことをきっかけに、失われていた恐ろしい記憶が甦る。落盤で坑道の奥に閉じ込められた彼が見たものは、地底の大空洞で卵から孵化し、メガヌロンをついばむ巨大な生物だった。柏木久一郎博士の調査団に同行して阿蘇に赴いた河村の眼前で、古代翼竜の大怪獣ラドンがはばたいた。

≪総論・見どころ≫
東宝初のカラー怪獣映画。原作者の黒沼健は日本におけるオカルト・ライターの草分けでもあり、本作でも自衛隊機が国籍不明機を追跡する場面では米国の有名なUFO事件のマンテル大尉事件がヒントにされている。原作者がオカルトライターということもあって、この「空の大怪獣ラドン」は他の怪獣映画と比べて最もホラーテイストの強い作品である。メインタイトルから、伊福部昭のおどろおどろしい音楽とともに始まるこの映画では、かの有名な「ゴジラ」のように主役怪獣であるラドンが物語の1/3ほどが進むまで中々現れない。その代わりに物語の序盤ではラドンの餌となる巨大昆虫「メガヌロン」と人間のやりとりが描かれることになるが、このメガヌロンパートが本当に怖い。ラドンの餌といってもこのメガヌロンは人間の二回り以上も大きいわけで、こいつが炭鉱で働く人間を次々と惨殺していく過程は、これまたかの有名な洋画「エイリアン」に似たものを感じさせる。水没した炭鉱では水中にひそみ何処にいるともわからないメガヌロンが「きゅるきゅるきゅる」という独特の活動音とともに人間に迫り獲物を静かに引きずり込む、かと思えば民家襲撃シーンでは主人公の前にいきなりメガヌロンが突然ぬっと現れ、銃撃をものともせず警備隊の数名を掻っ捌いて殺害していくのである。まるで映画の前座には見えない、「大昆虫メガヌロン」でもいいんじゃないかと思うような作りこみである。また、主役怪獣であるラドンの登場についてもかなり引っ張った演出がなされている。空自哨戒機をソニックブームで真っ二つにしたり阿蘇山で写真撮影中のアベックを捕食したりしながらもラドンは人間側に決定的な全容を中々みせず、こういった焦らしが「メガヌロンとは別の、もっと巨大な何かがいる」という不気味な予感を助長させることに成功しているといえよう。
さて、それらの経緯を経ていざ大怪獣ラドンが現れた後は、この映画の主な見どころである「円谷英二氏によるハイクオリティな特撮シーン」の出番。「ラドン」における特撮技術の特徴的なポイントは、優れたピアノ線技術によるラドン・ミニチュア戦闘機の操演と、精巧なジオラマセットによる佐世保区西海橋および福岡市天神区の再現とその破壊シーンである。前者のピアノ線操作では特に真昼の青空を背景にしてピアノ線で操作されたミニチュア機からロケット弾を発射する「ミニチュアを飛ばしながら発砲させる」という表現、西海橋下の渦潮からラドンが飛翔するシーンや岩田屋屋上にとまっていたラドンが飛び立つ(飛び降りる?)シーンでの着ぐるみごとスーツアクターをピアノ線で吊り下げる危険なワイヤーアクションなどが特徴的。後者についてはラドンが衝撃波で西海橋を叩き折るシーンやラドンの羽ばたきによる風圧で天神区の建物が吹っ飛び崩壊するシーンが迫力があり見ごたえがある。特に天神区におちたラドンと戦車隊との戦闘では民家の瓦一枚一枚が丁寧に作られており、それらが風圧により吹っ飛ぶという精巧な破壊描写が再現できている。また風圧で電柱が倒れるシーンでは漏電により青白い火花が飛び散るなど、本当に細かいところまで描いている。このような特撮技術が後の特撮怪獣映画にも大きな影響を及ぼしたことを考えると、その先駆けとなった「ラドン」は是非観ておくべきだろう。ちなみに西海橋は前年完成したばかりで、この映画の公開後西海橋や阿蘇山を訪れる観光客は明瞭に増え、以後の怪獣映画のロケ地として完成間もない注目の新ランドマークが宣伝も兼ねて怪獣に破壊される伝統の先駆けとなった。

以下見どころ
・ラドン追跡シーンとF-86Fセイバーとラドンとのドッグファイト
特技監督の円谷英二氏はもともとはパイロットだったということもあり、空を飛ぶ大怪獣ラドンとF-86Fジェット戦闘機との戦闘シーンは1956年当時の特撮技術と今を比較しても古臭さを感じさせないほど躍動感ある仕上がりとなっている。これは上述した見事なピアノ線操演によるものであるが、その一方、当時の特撮技術にも勿論限界はあったわけで、その辺を如何に補ってダイナミックな「空戦」を演出するかという工夫も随所に見て取れる。特徴的なのは、物語中盤、空自の哨戒機が謎の飛行物体(=ラドン)を追跡する、というシーンだろう。この時点ではラドンはその実態を見せていないため、正体不明の巨大な飛行物体と空自戦闘機とのチェイスをいかように表現するかには、相当試行錯誤がなされたのではないかと思う。自衛隊機とラドンがそれぞれ出す飛行機雲を中心として描かれた該当シーンでは、特撮技術だけでなく、伊福部昭の(序盤のホラーテイストとは一転した)アップテンポな楽曲と、自衛隊員の印象的な台詞回しとで盛り上げられている。

・ラストシーン、阿蘇山噴火
阿蘇山噴火のシーンではミニチュアセットの上で溶けた鉄を流すという現代の特撮ではおよそ実現できないであろう演出がなされている。そのせいで特撮スタジオは大変な暑さとなり、今でも語り草となっているあるラストシーンの原因となるわけであるが、これについてはここで文字におこすよりは興味ある人には詳細をぜひ映像で見てほしいと思う。


フランケンシュタイン対地底怪獣(1965)
「フランケンシュタインは死んだのかしら」
「いや、彼は永遠の生命を持ってる。いつかはどこかに出てくると思う…」

≪基本データ≫
1965(昭和40)年8月8日上映
英語タイトル:FRANKENSTEIN CONQUERS THE WORLD
配給:東宝
製作:田中友幸
音楽:伊福部昭
撮影:有川貞昌
監督助手:中野昭慶
特技監督:円谷英二
監督:本多猪四郎

≪ストーリー≫
第2次世界大戦末期、陥落寸前のドイツベルリンのリーゼンドルフ博士の研究室から、ナチによってはるばる日本に「あるもの」が運ばれ、Uボートを犠牲にしてまで広島の「広島衛戍病院」に移送された。いぶかる移送責任者の河井大尉の質問に対し、軍医長はそれが「フランケンシュタイン博士の創造した不死の心臓である」と説明する。しかしそれは直後に米軍によって投下された原子爆弾の爆発で消滅したかと思われた。
それから時は流れ、15年後の1960年。広島県のある住宅の飼い犬が何者かによって殺害され、ある小学校で兎のバラバラ死体が発見される事件が発生。また、激しく雨が降る晩、謎の浮浪児がタクシーに轢き逃げされた。数日後、宮島周辺に徘徊していたこの浮浪児が、「国際放射線医学研究所」のボーエン博士と助手の戸上季子(すえこ)達に保護された。少年は白人種であり、短期の内に急成長して20メートルに及ぶ巨人となっていく。その知能は低く、行動に予測がつかないため始末に困ったボーエンらは鉄格子付きの特別室で彼の手首を鎖でつなぎ、「飼育」することとなる。季子は彼を「坊や」と呼んで愛情を寄せるのだった。
時同じくして、秋田の油田を襲った地震の最中、巨大な怪獣らしきものが目撃される。中生代の終わりに地下にもぐって大絶滅を切り抜けた恐竜バラナスドラゴン=バラゴンであった。現在は秋田油田で技師を務めており、この場に居合わせていた河井は、国際放射線医学研究所のニュースを聞いて、巨人が敗戦直前に日本に運ばれたもの、すなわち、「フランケンシュタイン」の不死の心臓が人間の形を取ったものではないかとの思いを強める。
やがて巨人成長したフランケンシュタインはマスコミの格好の題材となり、取材が殺到することとなる。ドイツから帰国した川地は「坊や」の手を切り落とすことを決意、独り特別室へと向かう。しかし、檻の前では「興奮するから光をあてないで」との川地の指示を無視して、テレビスタッフが横暴にも照明を向けてしまった。ついに暴れ出して研究所を脱走すフランケンシュタイン。
脱走した彼は、闇にまぎれて広島から岡山、姫路、琵琶湖を経て東走、ついに故郷ドイツに気候の近い、日本アルプス周辺へと北上する。同じくしてバラゴンが白根山近辺で起こしている謎の災害と人間消失に、世間はフランケンシュタインが人間を襲い、喰っているのではないかと疑い始める。こうして自衛隊の出動などの強硬策が実施され、ついに石切現場でフランケンシュタインを発見、政府は一連の事件がフランケンシュタインの仕業であると断定、これを葬り去ることを決議する。

≪総論・見どころ≫
フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)は、東宝が海外資本との提携によって怪獣映画の新機軸を模索した意欲作で、怪獣映画としては初めての日米合作である。この作品の良さとして一つには、本多監督による、1931年版『フランケンシュタイン』をもととしたシリアス路線なストーリー・本編演出が挙げられる。「人間のようで人間でないもの」として生まれたフランケンシュタインそれ自身の悲哀や否応なく生じる周囲との軋轢、そして人間に育てられたゆえのフランケンシュタインの「人間臭さ」(例えば猪を落とし穴でとらえようとするシーンなどにそれが良く表れている)など、フランケンシュタインという人型の化物を主役に据えることで、他の怪獣映画にはないドラマ性がこの映画には込められている。
が、この映画で最も注目するべきものは他にある。それが、「円谷英二のミニチュアワークに対するこだわり」である。「ゴジラの逆襲」「ラドン」「モスラ」での大都市をターゲットとしたジオラマセットなど、他作品でもその技術の精巧さを窺い知ることが出来る円谷監督のミニチュアワークスであるが、この映画では登場する怪獣のサイズがゴジラの半分近い20メートル前後の設定にされていたこともあり、ミニチュアの縮尺も1/6、1/15(ゴジラ映画などでは1/25)で作られ、細部まで拘った非常にリアリティーのあるミニチュアセットが構築されている。見どころにもあげるが、特にそれが顕著に表れており、自分が「円谷監督って凄いなあ」と感じたのは、地底怪獣バラゴンによる白根ヒュッテ襲撃シーンである。崖に穴をあけ出現し、ヒュッテの数々に突撃し蹂躙するバラゴンの恐怖は、合成技術による襲われる人間との対比も手伝い、まるで本物の家屋が20m級の巨大生物によって破壊されているような印象を受けた。特撮映画は数多くあれど、ミニチュアワークの精巧さに感激したのはこの白根ヒュッテ襲撃シーンを除けばVSキングギドラの新宿高層ビル群・VSデストロイアの有明臨海副都心・ガメラ3の京都駅くらいだろう。蹂躙後のヒュッテの全景でも、バラゴンが抜け出してきて崖にぽっかりと空いた大きな穴を残しておくなど、芸が細かい。
また、ミニチュアの精巧さ以外にも、「ミニチュアを使って映像表現をする」ということにも細かなこだわりを見ることが出来る。フランケンシュタインの狩りの対象となる野生のイノシシや、バラゴンに襲われる馬などは、この映画ではわざわざミニチュアが作られているのである。観る人によっては安っぽい幼稚な表現に見えるかもしれないが、「こういうのはミニチュアでやったほうがいいんだ」という円谷氏の言葉もあるように、実写合成を使った映像表現とは異なる「味」を感じられるシーンである。

以下見どころ
・冒頭のドイツ空襲、Uボート、バラゴンによる白根山のヒュッテ襲撃
円谷英二氏によるミニチュアワークスの真髄

・動く「切り離されたフランケンシュタインの手」
これもミニチュアワークスのこだわりの一環として生み出されたものか。子供の時見たときは自分の幼さもあり、人工物とはいえモゾモゾと動く巨大な手に軽くトラウマを覚えたものである。

・自衛隊に追われながらも晩御飯のイノシシを落とし穴でとらえようとするフランケンシュタイン
本作の癒しシーンと思ってたら・・・アッー

・異なる2つのエンディング
実はこの映画、米国公開版と国内公開版ではエンディングが異なる。どちらもストーリーとしては大きな違いがないものの、特に米国公開版のエンディングはそれまでの展開から何の脈略も無く出現する”アイツ”のおかげで(?)いい意味でも悪い意味でもインパクトのあるラストになっている。ちなみに国内版しか知らなかった自分はフランケンシュタインの紹介画像になんで”こいつ”がいるんだろうといつも疑問に思ったが、それが明らかとなった問題のラストシーンでは正直目が点になってしまった。だってフランケンシュタインとバラゴンが闘ってたのは富士山の裾野なんだよ??


ゴジラ対メカゴジラ(1974)
「ゴジラめ、メカゴジラがお前と同じ性能だと思ったら大間違いだぞ!」
≪基本データ≫
1974(昭和49)年3月21日 上映
配給:東宝
観客動員数:133万人
製作:田中友幸
音楽:佐藤勝
監督助手:川北紘一
特技監督:中野昭慶
監督:福田純

≪ストーリー≫
沖縄海洋博会場建設技師の清水敬介は、弟・正彦と安豆味城跡を訪れる。そこで観光客を相手に伝統歌謡・仲里節を実演していた国頭那美(くにがみ なみ)は、怪獣が街を焼き払う啓示を受けて倒れた。続いて沖縄玉泉洞を訪ねた正彦は、洞内で不思議な金属を発見する。一方、会場予定地の建設現場で、壁画が描かれた洞穴が発見された。首里大学の考古学者・金城冴子(かなぐすく さえこ)は、壁画から「大空に黒い山が現れる時、大いなる怪獣が現れ、この世を滅ぼさんとする。しかし赤い月が沈み、西から日が昇る時、2頭の怪獣が現れ人々を救う」という予言を読み解いた。冴子は敬介とこの洞穴内に安置されていたシーサーの置物を携えて東京へ飛び、冴子の叔父である城北大学の考古学の権威・和倉博士の元を訪れるが、その途中、飛行機内で「黒い山のような雲」を目撃する。その頃、正彦は玉泉洞で拾った金属片を物理学の権威である宮島博士の元へ持ち込む。宮島博士はこれを地球上に存在しない宇宙金属・スペース・チタニウムであると断定した。
時を同じくして、富士山が噴火して巨大な岩石が飛び出し、その中からゴジラが出現。しかし鳴き声が違う上に、盟友であるはずのアンギラスを攻撃して撃退してしまう。
ゴジラは東京湾で石油コンビナートを襲撃し、黄色い放射火炎を吐いてコンビナート地帯を破壊する。このときゴジラの前に、工場の建物の中からもう1頭のゴジラが出現した。敬介たちの目の前で、激しい激突の中、先に現れたゴジラの皮膚が破けて下から金属部分が露出した。宮島博士はこれを見て、これが全身宇宙金属でできたサイボーグ、メカゴジラであると看破した。見る間に「にせゴジラ」の皮膚は燃え落ち、全身白銀色に光り輝くロボット怪獣メカゴジラが現れた。

≪総論・見どころなど≫
『中野爆発』。この映画を語るにおいてこれ以外の単語は必要ないと言っても過言ではない。有名作「日本沈没」をはじめとし、火薬を多様・多量に用いた過激ともいえる(少なくとも現代においてはあのような爆破シーンは撮影不可だろう)爆発シーンから「爆破の中野」という異名でも呼ばれる中野昭慶3代目東宝特技監督の演出は、特撮映画好きならばぜひ見ておくべき。メカゴジラ出現シーンでの火山の爆発、東京湾石油コンビナートでのゴジラ対メカゴジラの第一回戦。沖縄でのキングシーサー(別名かませ犬)も交えた決戦など、怪獣が暴れるところにこれでもかこれでもか火薬を使い大爆発を起こしている。スタジオが火事になったほどだというのだから、当時の撮影状況は凄まじい様相を呈していたに違いないだろう。また、自身で「シネマスコープ大好きおじさん」と称するだけあって、中野監督はシネマスコープ(画面アスペクト比12:5、アナモルフィック・レンズを使用して左右を圧縮し1.37:1の横縦比でフィルムに記録する技法)での映像の見せ方にもこだわりをもっている。キングシーサーとゴジラの2体に挟み撃ちされたメカゴジラが、首を180度反転させ、正対するゴジラにはミサイル攻撃、背後のキングシーサーには目からのスペースビームを撃ちそれぞれを一掃するシーンは、シネマスコープならではの構図に中野爆発が合わさり、見ごたえがある。
昭和後期におけるゴジラ映画はストーリーや演出等に迷走が見られ、映画としてみると評価の低いものが多く、この「ゴジラ対メカゴジラ」でも劇中に突然5分ほど歌謡ショウ(比喩)が挟まれてしまったりとチャチな演出はいくつかあるものの、メカゴジラという100%サイボーグの異色な怪獣との闘争をド派手な爆発によって迫力たっぷりに演出したという点において、この映画は後に続く平成ゴジラシリーズにも劣らないスペックを持っている。また、この映画とその続編ある「メカゴジラの逆襲」ではサスペンス性を重視した大人向けのシリアスなシナリオも用意されており、迷走気味であった昭和後期ゴジラ映画の中では比較的大人向けに路線変更され製作されていると思う。

以下みどころ
・石油コンビナート破壊シーン
シネマスコープのパノラマに色とりどりの爆炎が巻き上がり、轟音が轟く。その中で闘う2体のゴジラ。ここでの爆発演出にはCGには出せない特撮映画の”味”がある。

・元祖『オールウェポン』
ゴジラとキングシーサーにとどめを刺すため、目・口・両腕部・両脚部よりビームやミサイルをとんでもない密度で繰り出すメカゴジラ。佐藤勝の軽快な音楽とともに、これでもかこれでもかと火薬を多用し煌びやかなセルフ弾幕が展開されるこのシーンを見れば、メカゴジラこそが古今東西実写アニメを含め「オールウェポン」という概念を体現した元祖であると言うにふさわしい存在であることが分かるだろう。


ガメラ~大怪獣空中決戦~(1995)、ガメラ3~邪神覚醒~(1999)

最後の希望・ガメラ、時の揺りかごに託す。災いの影・ギャオスと共に目覚めん。

わたしは、ガメラを許さない

≪基本データ≫
ガメラ~大怪獣空中決戦~
1995(平成7)年3月11日 上映
配給:東宝
観客動員数:80万人

総指揮:徳間康快
製作代表:加藤博之、漆戸靖治、大野茂
製作:池田哲也、萩原敏雄、澤田初日子
脚本:伊藤和典
音楽:大谷幸
特別協力
防衛庁
海上保安庁

特技監督:樋口真嗣
監督:金子修介
製作:大映

ガメラ3~邪神覚醒~
1999(平成11)年3月6日 上映
配給:東宝
観客動員数:100万人

総指揮:徳間康快
製作代表:加藤博之、石川一彦、小野清司、鶴田尚正
脚本:伊藤和典、金子修介
音楽:大谷幸
特別協力
防衛庁
JR西日本
京都駅ビル開発

特技監督:樋口真嗣
監督:金子修介
製作:大映

≪ストーリー≫
ガメラ~大怪獣空中決戦~
太平洋上に謎の巨大漂流環礁が発見された。その環礁は黒潮の流れに乗って、だんだん日本に近づいているという。保険会社の草薙と海上保安庁の米森は環礁の調査に乗り出し、環礁の上で不思議な石版と大量の勾玉を発見する。さらに、この環礁が生物であるということが明らかになる。
同じ頃、九州の五島列島・姫神島で、島民が「鳥!」という無線を最後に消息を絶つという事件が発生。調査に呼ばれた鳥類学者の長峰はそこで、島民を喰らった巨大な怪鳥を発見する。
政府は貴重な生物であるとして怪鳥の捕獲を決定し、福岡ドームに怪鳥を誘い込む作戦を決行する。その時、博多湾にあの環礁=巨大生物が上陸。怪鳥の1匹を倒し、周りの建物を破壊しながら、ドームに向かって行く。予期せぬ事態に周囲は大混乱に陥り、その隙を突いた怪鳥は自らを閉じ込めていた鉄格子を強力な光線で切断して脱出する。巨大生物も円盤のような姿となって、怪鳥を追って飛び去っていった。

ガメラ3~邪神覚醒~
ギャオスとの戦いから4年、レギオンとの戦い(ガメラ2)から3年後の1999年。ガメラがレギオンを倒すために地球の生態系を循環する生命エネルギー「マナ」を大量に消費したことで地球環境のバランスが大きく崩れ、人間を捕食する殺戮生命体ギャオスが世界各地で大量発生し世界規模で急速に被害が拡大していた。
4年前の東京でのガメラとギャオスの戦いの巻き添えで両親を失った比良坂綾奈と弟の悟は、奈良県高市郡南明日香村(架空の地名)に住む親戚の日野原家に引き取られていた。綾奈の心は両親の仇ガメラへの激しい憎悪の念に満ちていた。ある日、綾奈は悟をよそ者扱いをしていじめる同級生の3人組を止めるため、守部家の敷地内の沢に在る古くから「柳星張(りゅうせいちょう)」が眠ると伝えられている祠の奥にある洞窟へ、度胸試しのごとく言われるがままに入り込み、その中で奇妙な卵状の物体を見つける。
ある週末の夜、東京渋谷上空に2体のギャオスが飛来、それを追ってきたガメラとの壮絶な市街戦が展開される。ガメラがギャオスを撃破し戦いは終結するが、戦場となった渋谷はプラズマ火球により甚大な被害を受け、1万人を超える犠牲者が出てしまう。これを機に日本政府及び世論はギャオス以上にガメラを危険視する方向にシフトしていく。そして、ニュースで壊滅した渋谷から飛び去るガメラを見た綾奈は改めてガメラへの憎悪を強くする。
ガメラが渋谷でギャオスを爆殺した同時刻、その断末魔の叫びに応えるかの様に綾奈が洞窟で見つけた卵状の物体から奇妙な生物が生まれた。綾奈はその生物にかつて飼っていた愛猫の名前である「イリス」という名前を付け、いつか両親の仇ガメラを殺してくれることを願って密かに育て始める。だが、イリスは守部家に代々伝えられる「復活すればこの世は滅びる」と恐れられる災厄だった。綾奈の憎悪を糧に急速に成長したイリスは綾奈を繭に自身ごと包み込む。直後に駆けつけた守部家の長男・龍成が救出するものの綾奈は意識不明になり、イリスも姿を消した。

≪総論・見どころ≫
「特撮技術」の項目について、最後に紹介するのが平成ガメラシリーズの第1作と第3作、ガメラ~大怪獣空中決戦~とガメラ3~邪神覚醒~である。本当は第2作であるガメラ2~レギオン襲来~と合わせて紹介するべきだと思うが、ガメラ2のリアリティの高さ故、あちらは別枠で先に紹介することとなった。金子修介監督によるこれら一連の三部作は「平成ガメラシリーズ」と呼ばれるが、いずれの作品も質の良い特撮シーンを提供しており、本格的怪獣映画としての評価が非常に高い。これらの特撮シーンは、1日におよそ2カットという超スローペースで撮影が行われたらしく、本当に細かな部分まで計算され大事に大事に撮られたであろう各シーンには、ほかの怪獣映画に少なからず見られる「甘さ」(特に実写合成技術に関して)は全くない。ある意味安心して視聴することができる映画である、といってもいいだろう。先に紹介した「ゴジラ対メカゴジラ」や「平成ゴジラシリーズ」に特徴的な派手な演出はあまりなく、怪獣の重量感の演出といって点ではゴジラシリーズに引けを取る面はあるものの、特撮の精巧さでは平成ガメラシリーズは全ての特撮怪獣映画の中で一歩抜きん出ていると評価することができるだろう。

平成ガメラシリーズはそもそも、「王道の怪獣映画を作りたい」というモチベーションのもとで製作された映画である。その意気込みはやはりシリーズ第1作目であるガメラ~大怪獣空中決戦~において最も強く感じ取ることができる。特に「樋口組」と呼ばれる特撮班の、「これまでの怪獣映画で不満に思っていたことを、このガメラで徹底的にぶちまけてやろう」という熱意は並々ならぬものがあったようで、撮影シーンの随所に様々な技術的工夫とともにそれが強く込められている。例として一つ挙げるならば、怪獣を映す際のカメラの角度。怪獣を映すのだからそれは人間の視点(見上げるような角度)を用いるべきで、あまりに高い角度からの視点ばかりでは怪獣のもつ迫力がなくなってしまう。本作では多くのカットで人間の目から見た視点で怪獣が撮られ、視点の統一が徹底されている。このように、特撮シーンの1カット1カットごとに「怪獣の映画を撮るとはどういうことか」という命題に沿った工夫がなされている。

また、多くの特撮怪獣映画、特に良く比較対象として挙げられる平成ゴジラVSシリーズと比べて圧倒的にガメラシリーズが優っているといえるのが、実写合成技術及び最新鋭のデジタル合成技術の運用である。オプチカル合成が主に使用されていた1作目から4年間を経て、最終作ガメラ3では最新鋭のCG技術・実写合成技術が惜しみなく投入され、従来の怪獣映画とは臨場感という面で一線を画す視覚効果を演出することに成功している。平成ガメラシリーズが製作された時期は、こういった映像技術の革新的進歩とちょうど重なった時期でもあり、ガメラシリーズは映像技術の発展とともに進化してきた作品であるともいえる。ガメラ3はその進化の極致であり、その映像技術は特撮怪獣映画の最高峰といっても過言ではない。むしろ、個人的には現在まで含めたあらゆる日本映画の中でもトップクラスに位置すると思っているくらいである。それが良くわかるのが、ガメラ3冒頭の渋谷襲撃シーンと、紀伊半島沖での自衛隊F-15、イリス、ガメラの空戦シーンであり、いまだにこれらのシーンを超えるものを邦画では僕は見たことがない。渋谷襲撃シーンでは本編実写との「境目」を見せない巧みな合成によって「怪獣が突如市街地に現れ蹂躙する」という展開をリアリティたっぷりに、まるで本当に100m近い巨大生物が暴れているかのように魅せている。また、紀伊半島沖の空戦シーンではガメラやイリスのアクションにCGを多用することで、スピーディな空中戦闘をハイクオリティに映像化した。かといってCG技術に頼りすぎた「安っぽい映像」になることも勿論なく、最終戦での京都の古都の街並みや京都駅のように精巧なミニチュアセットを組み、その中で着ぐるみの怪獣を使った撮影を行うという日本特撮怪獣映画の伝統的な手法に、最新の映像技術を効率的に組み込んでいるのが、このガメラ3の特撮シーンを最高レベルに引き上げている所以である。

(ガメラシリーズ通しての唯一の欠点であるが)、人間側の役者の演技がかなり棒で残念なところもあるが、それを差し引いてあまりあるほどの魅力を平成ガメラシリーズは備えている。最高レベルの特撮技術、迫力満点でカッコいい怪獣の演出、など、技術という面において特撮怪獣映画はここまでやれるのだ、ということをこのガメラシリーズを通して感じてもらえればと思う。

以下見どころ
・ガメラ~大怪獣空中決戦~、夕焼けに映える東京タワーとギャオス
折れた東京タワーに巣作りをするギャオス、襲撃を受けた首都東京の全景と美麗な夕焼け空とのコントラスト。特撮班のスタッフが猛暑の中一日中タイミングを待って撮影されたという該当シーンは、特撮映画の中でも1,2を争う美しさである。

・ガメラ3、渋谷襲撃シーンと紀伊半島沖空中戦
最高レベルの特撮技術を携え、「怪獣がいきなり人間の住む市街地に現れ、周囲一体を火の海と化し、人々を焼き払う」という怪獣映画のタブーへと挑戦した渋谷襲撃シーン。そして、月明かり映える雲海において繰り広げられる二大怪獣の空中戦。細かい説明は不要でとにかく見てほしい。特撮映画の最高峰がここにある。


References
【怪獣wiki特撮大百科事典 http://wiki.livedoor.jp/ebatan/
【Wikipedia】
【 自衛隊イラク派遣5:若者照準、映画に協力 http://www.asahi.com/special/jieitai/kiro/040323.html
【ゴジラ-特撮SIGHT http://www.k5.dion.ne.jp/~god-sf/index.html
【みんなのシネマレビュー http://www.jtnews.jp/index.html
【日本の軍事=安保環境と巨大怪獣映画 http://blog.goo.ne.jp/weltstadt_16c/e/7c08edf7a098cf3f2436c1d96f55b3c9
【平成ガメラ Blu-Ray BOX 映像特典~15年目の証言~】
【Godzilla and Other Assorted Fantastic Monsters http://godzilla.open-g.com/
etc...

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