GODZILLAの感想

2014年7月31日 日常
そろそろ色んな所でも感想が出始めているので。
一応、ネタバレ注意

この映画についてはアメリカで1回、日本で公開初日に1回観ました。それを観ての感想だけど、簡単にいえば・・・

「ゴジラが出てくるまではかなり真っ当な怪獣映画でテンションは上がり続ける。ゴジラが出てきた所で絶好調となり、あとは下がり続ける」。そんな映画でした。

あと、1998版がジュラシックパークとしてならば観れたように、このGODZILLAはキング・コングとしてなら十分楽しんで観られるなとも思った。

今作GODZILLAを観る場合には、「怪獣映画」としてみるか、「特撮映画」としてみるか、「ゴジラ映画」としてみるか、人によって様々な見方があると思う。個人的に、それぞれの立場から本作を観ると、

怪獣映画としては30点。
特撮映画としては70点。
ゴジラ映画としては”個人的”には50点。

という感じ。

怪獣映画としては、はっきり言って残念な出来。パシフィックリムの時にも同じ感想を抱いたけど、なんつーかやっぱハリウッドがKAIJU作っても結局ただのデカいクリーチャーにしかならんのだな。デザインとかそういう問題ではなくて、怪獣の”動き”が人間と等身大の”クリーチャー”としての動きになっているのが残念極まりない。この点はやはり、「等身大の着ぐるみで演じる怪獣をどうやって巨大に魅せるか」ということに心血を注いできた日本の怪獣映画のような下地が全くないことが原因なのだろうか。

何が気に喰わないかというと、MUTOなりゴジラなり、100m近くあるはずの巨大怪獣の動きが機敏すぎることと、また移動時のシーケンスがぶつ切りで「気が付いたら近くにいた」という演出が何度も何度も出てくること。これに尽きる。前者はまあまだ我慢できる。ホントは光速度撮影で描かれる怪獣の動きが最もいいと思うんだけど、ゴジラの逆襲という例もあるし、巨大怪獣同士のスピーディなプロレスもそれはそれで味があるものだ。

でもさ、例えばホノルル空港でMUTOとゴジラが対峙するとき攻撃ヘリが眼下にいるはずのゴジラに全く気付かず突然現れた(ように見える)背びれを緊急回避しようとしてMUTOに激突するシーンとか、徒歩で移動中であると思われていたMUTO♀がサンフランシスコ市街に突然粉塵と共に現れるシーンとか、ラストの主人公に迫るMUTO♀の背後にいきなり(ビルの下敷きになっていたはずの)ゴジラが現れて喉元に喰らい付くシーンとか、あげればもっとあるけど「怪獣が今そこに瞬間移動したかのような」演出を使いすぎ。100m超の山みたいな物体が移動するのだから、その移動の一歩一歩をきちんと描写してほしかったし、そうすることで初めて巨大怪獣が迫りくるプレッシャーを観客に感じさせることが出来るんじゃないだろうか?ゴジラの全体像はMUTOとの対峙シーンにとっておくにしても、ホノルル市街をゴジラが闊歩して空港へと至るシークエンスはもっと丁寧に描いてほしかったし、MUTO♀がサンフランシスコ市外へと接近するシークエンスも、当然張られるべき防衛線との交戦も含めて描いてほしかった。ラストであれば背後から迫りくる巨大な足音にMUTO♀が勘付いて、復活したゴジラと相対した後に最終決戦へと移る演出にしてほしかった。

ここらへんの、等身大の(例えばエイリアンみたいな)クリーチャーを描く上では通る演出を、大怪獣の描写にそのまま適用してしまっているのが至極残念だった。

序盤のMUTOによるジャンジーラ原発襲撃や、ホノルル市街へのゴジラ上陸など、怪獣の実像を見せない場面では”迫りくる巨大生物”を上手くみせてくれたので期待してたんだけど、いざ怪獣の実像が出てしまうと上述の”ワープ演出”が気になって気になってしかたがなかった。冒頭でゴジラ出てきた後テンション下がるっていったのの原因の8割はこれ。

一方、特撮映画として観るとGODZILLAはかなりいい線いってる特撮映画だと思う。特殊撮影技術=CGと考えるけど、昨今の邦画のCGレベルでは決してできないことを幾つもやってくれて、怪獣映画かつ特撮映画で最高レベルのCGをフルで使うとこうなるんだ、というのが漸く見られたと感動した。

特に最も注目してみていたのは、「実写との合成」と「人間視点での怪獣描写」。この二つはCGをフルに使うことの最も大きな利点だと考えていて(平成ガメラでも常に見上げるような視点で撮影することの困難さをスタッフが語っている)、それを最大限生かして実現したサンフランシスコ金門橋におけるゴジラ出現シーンは、本作でしか実現しえなかった名シーンだといえるだろう。爆発処理班の高高度からの戦闘地域へのダイブシーン、ゴーグル越しに映るMUTO対ゴジラの死闘もCGならではの出来で非常に見ものである。

余談だけど、個人的に一番うれしかったのが、米海軍艦隊に追従されながら太平洋をハワイからサンフランシスコへと航行するゴジラのシーン。「泳ぐゴジラ」をみせるってのは凄く大変なことで、海面から上半身を出し下は立ち泳ぎみたいな突っ込み厳禁な泳ぎ方でもなく、イグアナのように尻尾と全身を使ってうねるように航行するゴジラをちゃんと描いてくれただけでもこの映画の価値はあると思う。これまでにもVSビオランテや大怪獣総進撃でも泳ぐシーンは出てきたけど、どれもいまいちだったからね。海軍艦隊と並走させることで黒氷山とでも評すべきゴジラの巨大感も出ており、本作のベストシーンを上げるなら金門橋かこれのどちらかだろうといってもいい。

最後にゴジラ映画として。これは個人によってゴジラをどう見るかで変わる問題なのであまり批判的なことは書きたくないけど、自分自身としてはゴジラを「人間の理解の範疇を超えた超自然的存在」としてみせたいのか、「実物大のヒーロー」としてみせたいのかが中途半端な感じが否めなかった。なんというかVSシリーズのゴジラと昭和シリーズの2代目ゴジラが混ざったようなゴジラ像だったかな。

超常の存在としてゴジラを描きたいなら(むしろ予告編から自分が期待してたのはそういうゴジラなんだけど)、MUTOぶっ殺してサンフランシスコ市街を粉々にして「人間では抗いようもない、災害のような暴力」をもっと見せつけて海に帰って欲しかった。それこそゴジラが起き上がった後「King of Monster! Woooooooooo!!」みたいな歓声など微塵も起こらないように。

ヒーロー、善玉としてのゴジラを描きたかったなら、もっと主人公含めた米軍部隊との絡みが欲しかった。ガメラ2みたいにMUTO2体に対抗するために、人間側がゴジラを支援する作戦を立てるとかさ。そう仲良しこよしみたいな感じじゃなくても、主人公部隊の目的を「核ミサイルの時限装置解除・搬出」ではなく「MUTOの卵を撲滅」に変えるだけでもゴジラと人間との共闘感が出て良かったと思うんだけどな。あそこらへんの展開はどうにも分かりにくかった。主人公がなぜ任務を一時放棄してMUTOの卵を焼き殺したのか?父親の敵だったのか?話の都合上焼き殺しました感が残ってしまって若干消化不良だった。

ただどちらかといえば、個人的には、伝統的なゴジラの設定、すなわち水爆によって生まれた=人間の手で作られた怪獣という設定を変え、太古の昔から地球のエネルギーを糧に悠久の時を生きながらえてきた超生物、人間側の最高の武力=核すらものともしない、いわゆる人間すら支配下におく自然界の”頂点”としてゴジラを据え置いたのだから、作中のゴジラにはもっと頂点支配者感があって良かったんじゃないかと思う。なんか1998版と比べものにならないくらい頑丈になったとはいえ微妙にタフネスが無くてバテるの早いんだよなあ・・・

完全に妄想だけど、ラストシーンとかもMUTOを倒したゴジラが核ミサイルの爆発に巻き込まれる⇒「物凄い放射能だ・・・」⇒「放射線レベルが急速に下がっていきます!」からの核エネルギー全部吸収したゴジラがけろりとした顔で現れるとかだったら最高だった。まそれはあくまで個人の妄想なので割愛。

「ゴジラ映画」として一番重要なのは、ゴジラと敵怪獣とを格好よく見せることだと思うんだけど、上述したようにゴジラの立ち位置が若干曖昧なのと、MUTOは敵怪獣としてはちょっと地味だったことを考えると、やっぱり個人的には50点だなあ。

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・・・そんな感じでGODZILLAの感想でした。まあなんだかんだ言って楽しめたので良かったっちゃ良かった。続編作られるようだけど、モスラとかキングギドラとか出てくるなら完全にエンターテイメント志向になるよね。それでもいいけど、怪獣の魅せ方に大きな不満の残る本作から考えるとあまり続編には期待が出来なさそうだな。

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以下細かい突込み。

・元々ゴジラと同類の生物へ寄生していたMUTOだが生態が完全に変わっていないか?ゴジラに卵を産み付けようとするのかと思えばそうでもないし。より簡単に手に入る現代の核物質を糧により多く繁殖するようメカニズムを変えたのか?

・劇中の描写をみるに明らかに♀MUTOが♂MUTOに出会う前に既に発生段階が大分進んでる卵を保持しているんだが、生殖のために♂MUTOっているの?有性生殖のための♂♀ではなく単騎で繁殖できる個体とそれを守る兵隊のような役割と考えていてよいのだろうか。

・さすがに♀MUTOが冬眠中の卵を核廃棄物の山の中に放置していたってのは無理があるでしょ。フィリピンで発見された二つのうち、既に孵化した♂MUTOがジャンジーラで活動していることを考えると、♀MUTOの方もいつ冬眠から覚めてもおかしくないし、もし核物質の山が貯蔵されているエリアで目覚めたら♂MUTOと同じく大事故の原因となるくらい予想し予防できんものだろうか?

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